第4類の第1石油類は、1気圧で引火点が21℃未満(特殊引火物を除く)のものを指します。
ガソリン、ベンゼン、トルエンなど非水溶性のものと、アセトン、ピリジンなど水溶性のものがあります。
蒸気比重は1より大きいものが多く、地上をはって離れた低所に滞留することもあります。
一般的な定義はこんな感じです。
それでは次の章から、第4類の第1石油類一覧について、指定数量や引火点など、さらにくわしく見ていきましょう。
第4類の第1石油類の一覧や指定数量・引火点をチェック!
【第1石油類】
- ガソリン
- ベンゼン
- トルエン
- 酢酸エチル
- エチルメチルケトン(メチルエチルケトン)
- アセトン
- ピリジン
第4類の第1石油類➀ガソリン・CmHn
ガソリンは特有の臭気があります。
そして炭素数4~10程度の炭化水素の混合物で、主成分は特定しにくく、完全燃焼すると、二酸化炭素と水になります。
皮膚に触れると皮膚炎を起こすことがあり、その蒸気を吸入すると頭痛やめまいなどを起こします。
また、電気の不導体で、流動により静電気が発生しやすいです。
さらに第1・6類危険物の酸化性物質(過酸化水素、硝酸など)と混合すると、酸化発熱・発火・爆発したり、爆発性の過酸化物を生成する危険性があります。
引火点などのまとめは以下のとおり。
引火点 | ‐40℃以下 |
沸点 | 38~220℃ |
発火点 | 約300℃ |
比重 | 0.65~0.75 |
燃焼範囲 | 1.4~7.6vol% |
蒸気比重 | 3~4 |
一方、灯油や軽油と識別するため、自動車用ガソリンは着色剤(油溶性染料)によりオレンジ色に着色されています。
ちなみに工業用ガソリンは無色透明です。
日本産業規格により、自動車用ガソリン、航空用ガソリン、工業用ガソリンの3種類に分けられており、ガソリンには不純物として、微量の有機硫黄化合物が含まれています。
さらにガソリンには、品質向上を図るため、用途によりさまざまな添加剤が加えられているのです。
ガソリンは石油からつくられた合成ゴムや樹脂、プラスチック等と親和性が高いため、それらを膨潤させます。
※膨潤:油や溶剤などが物質の分子間に入り込み、物質体積を増加させ、外観を変化させたり、物性を劣化させたりすることをいう。
ガソリン・エンジンのノッキングの起こりにくさ(耐ノック性・アンチノック性)を示す数値をオクタン価といい、高いほどノッキングが起こりにくいです。
自動車用ガソリンにはオクタン価向上剤としてエーテル類やアルコール類を添加したものがあります。
エーテル類やアルコール類はオクタン価が高いよ
メタノールなどのアルコールを10~20%混合したアルコール混合ガソリン(ガソホール等)は、石油資源の節約、廃ガス中の二酸化窒素の低減、オクタン価の向上などが目的として開発・製造されています。
第4類の第1石油類②ベンゼン・C₆H₆
無色で芳香族(芳香族炭化水素)特有の甘い香りを持ちます。
水には溶けませんが、アルコールやジエチルエーテルなど多くの有機溶剤にはよく溶けます。
一般に樹脂、油脂等をよく溶かします。
凝固点(融点) | 5.5℃ |
引火点 | ‐11℃以下 |
沸点 | 80℃ |
発火点 | 約498℃ |
比重 | 0.9 |
燃焼範囲 | 1.2~7.8vol% |
蒸気比重 | 2.8 |
揮発性があり、蒸気は強い毒性をもちます。
また電気の不導体で、流動により静電気が発生しやすいです。
一方、冬季は固化(凝固)することもあります。
第4類の第1石油類③トルエン・C₆H₅CH₃
無色で特有の臭気があり、芳香族炭化水素です。
引火点 | 4℃以下 |
沸点 | 111℃ |
発火点 | 約480℃ |
比重 | 0.9 |
燃焼範囲 | 1.1~7.1vol% |
蒸気比重 | 3.1 |
水には溶けませんが、アルコールやジエチルエーテルなど多くの有機溶剤にはよく溶けます。
一般に樹脂、油脂等をよく溶かします。
蒸気の毒性はベンゼンより弱いですが、長期にわたる吸入は、脳障害を負うリスクがあり危険です。
濃硝酸と反応(ニトロ化)すると、第5類危険物のトリニトロトルエン(C₆H₂CH₃(NO₂)₃)を生成することがあります。(※トリニトロトルエンはTNT火薬の主成分)
一方、金属への腐食性はありません。
第4類の第1石油類④酢酸エチル・CH₃COOC₂H₅
無色で果実臭があります。
引火点 | ‐4℃以下 |
沸点 | 77℃ |
発火点 | 約426℃ |
比重 | 0.9 |
燃焼範囲 | 2.0~11.5vol% |
蒸気比重 | 3.0 |
水に少しとけ、アルコールやベンゼン、ヘキサンなど、ほとんどの有機溶剤に溶けます。
また流動や揺動により静電気が発生しやすいです。
第4類の第1石油類⑤エチルメチルケトン・メチルエチルケトン・CH₃COC₂H₅
無色で、特異な臭気があります。
引火点 | ‐9℃以下 |
沸点 | 80℃ |
発火点 | 約404℃ |
比重 | 0.8 |
燃焼範囲 | 1.7~11vol% |
蒸気比重 | 2.5 |
水には少し溶け、アルコール、ジエチルエーテルなどにはよく溶けます。
泡消火剤は、水溶性液体用のものを使いましょう。
また水を霧状に噴霧すると、冷却作用と希釈により消火できます。
また直射日光を避けて、通風のよい冷暗所に貯蔵してください。
第4類の第1石油類⑥アセトン・CH₃COCH₃
無色で、特異な臭気があります。
水のほか、アルコール、エーテル、クロロホルムなどにもよく溶け、両親媒性(水にも油にも溶ける性質)があります。
引火点 | ‐20℃以下 |
沸点 | 56℃ |
発火点 | 約465℃ |
比重 | 0.8 |
燃焼範囲 | 2.5~12.8vol% |
蒸気比重 | 2.0 |
常温(20℃)で高い揮発性を有します。
第6類危険物の過酸化水素や硝酸と混ぜてはいけません。混合すると、酸化作用により発火することがあります。
また、マニキュアの除光液やプラスチック系接着剤、塗料の溶剤などに使われています。
一方、泡消火剤は、水溶性液体用のものを使いましょう。
水を霧状に噴霧すると冷却作用と希釈により消化できます。
第4類の第1石油類⑦ピリジン・C₅H₅N
無色で特異な悪臭があります。
引火点 | 20℃ |
沸点 | 115.5℃ |
発火点 | 約482℃ |
比重 | 0.98 |
燃焼範囲 | 1.8~12.4vol% |
蒸気比重 | 2.7 |
水によく溶ける理由は、ピリジンの窒素原子が水と水素結合を形成しやすいためです。
またアルコール、ジエチルエーテル(エーテル)にもよく溶けます。
第4類の第1石油類!過去問例題・解答&解説付き
第4類★第1石油類に関する過去問例題にチャレンジしてみてください。
第4類第1石油類!問1自動車ガソリンの性状
次のうち誤っているものはどれか。
- 水より軽い。
- オレンジ系の色に着色されている。
- 自然発火しやすい。
- 引火点は一般に‐40℃以下である。
- 燃焼範囲はおおむね1~8vol%である。
解答3
【解説】
ガソリンは自然発火することがない。動植物油類の乾性油は、空気中で酸化され、その熱で自然発火することがある。
第4類第1石油類!問2ベンゼンの性状
次のうち誤っているものはどれか。
- 無色透明の液体である。
- 特有の芳香を有している。
- 水によく溶ける。
- 揮発性があり、蒸気は空気より重い。
- アルコール、ヘキサン等の有機溶媒に溶ける。
解答3
【解説】
ベンゼンは水に溶けない。ただし、アルコールやヘキサンなどの有機溶媒にはよく溶ける。
第4類第1石油類!問3トルエンの性状
次のうち誤っているものはどれか。
- 無色透明の液体である。
- 金属への腐食性はない。
- 濃硝酸と反応し、トリニトロトルエンを生成することがある。
- 比重は1より大きい。
- 引火点は20℃以下である。
解答4
【解説】
比重は0.9である。
第4類第1石油類!問4酢酸エチルの性状
正しいものはどれか。
- 酢酸のような刺激臭がある。
- 無色の液体である。
- 水によく溶ける。
- 引火点は常温(20℃)より高い。
- 沸点は100℃より高い。
解答2
【解説】
1.果実臭がある。
3.水に少し溶ける。
4.引火点:‐4℃
5.沸点:77℃
第4類第1石油類!問5エチルメチルケトンの貯蔵または取り扱いの注意事項
次のうち不適切なものはどれか。
- 換気をよくする。
- 貯蔵容器は通気口付きのものを使用する。
- 火気を近づけない。
- 日光の直射を避ける。
- 冷暗所に貯蔵する。
解答2
【解説】
第4類危険物は、通気口のない貯蔵容器に入れて密栓する。
第4類第1石油類!問6アセトンの性状
次のうち誤っているものはどれか。
- 比重は1より小さい。
- 揮発性を有する。
- 無色で特有の臭気を有する。
- 水に溶けない。
- 蒸気比重は1より大きく、蒸気は低所に滞留する。
解答4
【解説】
アセトンは水によく溶ける。
【関連記事】
第4類の第1石油類の一覧や指定数量・引火点をチェックまとめ
ガソリン
引火点 | ‐40℃以下 |
沸点 | 38~220℃ |
発火点 | 約300℃ |
比重 | 0.65~0.75 |
燃焼範囲 | 1.4~7.6vol% |
蒸気比重 | 3~4 |
ベンゼン
凝固点(融点) | 5.5℃ |
引火点 | ‐11℃以下 |
沸点 | 80℃ |
発火点 | 約498℃ |
比重 | 0.9 |
燃焼範囲 | 1.2~7.8vol% |
蒸気比重 | 2.8 |
トルエン
引火点 | 4℃以下 |
沸点 | 111℃ |
発火点 | 約480℃ |
比重 | 0.9 |
燃焼範囲 | 1.1~7.1vol% |
蒸気比重 | 3.1 |
酢酸エチル
引火点 | ‐4℃以下 |
沸点 | 77℃ |
発火点 | 約426℃ |
比重 | 0.9 |
燃焼範囲 | 2.0~11.5vol% |
蒸気比重 | 3.0 |
エチルメチルケトン
引火点 | ‐9℃以下 |
沸点 | 80℃ |
発火点 | 約404℃ |
比重 | 0.8 |
燃焼範囲 | 1.7~11vol% |
蒸気比重 | 2.5 |
アセトン
引火点 | ‐20℃以下 |
沸点 | 56℃ |
発火点 | 約465℃ |
比重 | 0.8 |
燃焼範囲 | 2.5~12.8vol% |
蒸気比重 | 2.0 |
ピリジン
引火点 | 20℃ |
沸点 | 115.5℃ |
発火点 | 約482℃ |
比重 | 0.98 |
燃焼範囲 | 1.8~12.4vol% |
蒸気比重 | 2.7 |
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